2020.10.31 Saturday

沈みゆくアメリカ覇権〜止まらぬ格差拡大と分断がもたらす政治〜 中林美恵子

テレビなどで、アメリカ情勢の解説や、最近ではアメリカ大統領選挙の解説でよく見かける中林美恵子氏。

的確なコメントを見て、この方の本を読んでみたいと思い購入したのだが、なかなか面白い。

まず最初に驚かされるのが、中林氏のアメリカ人脈のすごさである。

共和党側で働いていたにもかかわらず、日本と比べて政党の垣根が低いのもあるだろうが、民主党側の人脈も豊富で現場の生の声を聴き、それをもとに解説してくれているのには驚かされる。

トランプ陣営、バイデン陣営を分かりやすく解説してくれており、それぞれの候補の日々のエピソードなども交えて人間性などに関しても触れており、個人的にはバイデン氏の人柄に好感を抱いた。

また両候補の紹介だけではなく、共和党、民主党の内政・外交政策について解説しており、外交に関しては特に中国との関係や、中東との関係はかなり深く解説してくれている。

共和党、民主党ともに一枚岩ではなく、特に民主党に関してはかなり左寄りの方もいて、そことの調和、特に環境問題での対応では意見が大きく異なるようで、内部分裂の懸念もあるそうである。

もちろんアメリカ大統領選挙が日本に与える影響も解説してくれているのだが、どちらが大統領になっても日本には厳しい現実が待っているようである。

アメリカ大統領選挙に興味がある方は、結果が出る前に読んでみてはいかがだろうか?



私は前から思っているのだが、アメリカに豊富な人脈を持っている中林氏や、ロシアに豊富な人脈を持っている佐藤優氏のような方々を、日本政府はもう少し有効活用できないものだろうか?

佐藤優氏の場合、古巣の外務省がかなり嫌がるだろうが…(笑)

2020.10.24 Saturday

なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したのか 望月衣塑子 佐高信

望月氏と佐高氏の対談を文字に起こしている感じなので、口語体で読みやすく1日で読み終えてしまう。

日本のジャーナリズムというテーマなのだが、過去の政治家や官僚と、現在の政治家や官僚を比べて、最近は器が小さくなったなと思わざるを得ない。

映画「新聞記者」とその作品で主役を務めた松坂桃李さんの覚悟について、昔の自民党政治家の人としての器の大きさ、読売新聞の主筆でもあるナベツネこと渡辺恒雄氏の「新聞記者は、火付け、盗賊、殺人以外は何をやってもいいんだ」 発言などから、森友学園問題と財務省近畿財務局の職員であった赤木俊夫さんの本物の公務員としての姿などが書かれており興味深い。

ナベツネの意外な一面はとても笑えるのだが、赤木さんの話は泣けてくる…





ちなみに、この二人は慶應出身なのだが、どちらも正統派ではない塾員って感じがしてならない(笑)

そういう私も正統派じゃないかも!?

2020.10.13 Tuesday

暴走する検察 歪んだ正義と日本の劣化 神保哲生 宮台真司

神保氏と宮台氏が、弁護士で元検察官の郷原信郎氏、同じく弁護士で元検察官の市川寛氏、林眞須美死刑囚の主任弁護人である安田好弘氏、映画監督の周防正行氏、法学者の足立昌勝氏、弁護士の今村核氏といった有識者を招いて、それぞれのテーマで鼎談を行なう本なのだが…

実は神保氏と宮台氏があまりにも熱すぎて(笑)招かれた有識者の方の意見があまり聞けないのがやや難点なのだが、日本の司法の問題、検察の在り方について分かりやすく指摘してくれている。

日本において、警察による逮捕後48時間以内に検察に送致し、検察ではまず10日間勾留が続き、やむを得ない場合に限りさらに10日間延長されることとなっている。

ところが先進国では、勾留機関は2〜3日で日本のように長期間勾留する国はなく、長期間勾留してからの供述は証拠能力が問われるとのこと。

確かに何日も留置所に入れられ、精神的に参ってしまったところででた供述を証拠にするのはいかがなものだろうか?

またこの取り調べは可視化されていない密室で行われており、弁護士の立ち合いも認められないというのは世界では異例のことで、国際社会では現代の制度とは思えないような制度のそうである。

確かに、自分が司法試験合格した検事と法律で議論しろと言われても、こちらの粗探しをする検事と対等に戦うのは難しい。

個人的に私が物事の本質をついていると思えたのが、いわゆる冤罪で嫌疑をかけられた人ほど、いずれ捜査機関も裁判所も分かってくれると真面目に戦わないらしい。

一方、本当に犯罪を犯した不届き者ほど刑を逃れようと一生懸命戦うそうである。

そうすると罪を犯した者が刑を免れ、罪を犯していない者が刑を科せられるということが起きてしまうのではないか?



「疑わしきは罰せず」が基本であるはずが、この国においては疑わしいだけで有罪になってしまいそうで怖い…

そんな検察の改革は必要なのだが、検察を悪用しようとする政治家は多いが、真剣に改善しようという政治家はいないように思える。

2020.10.12 Monday

世紀の落球 「戦犯」と呼ばれた男たちのその後 澤宮優

タイトルにつられて購入。

北京五輪の野球日本代表となったG.G.佐藤。今も語り継がれる高校野球星稜・箕島戦の星稜一塁手加藤直樹。最終戦で敗れ、巨人のV9を阻止できなかった阪神の池田純一中堅手。

これらの3人の落球と、その後の人生がテーマなのだが、世代的に私が記憶にあるのがG.G.佐藤の北京オリンピックでの落球だけである。

そのため、このエピソードを中心に話をするが、2008年北京オリンピックに星野仙一率いる日本代表が金メダルを目指して挑んだ大会である。

この年のシーズン、G.G.佐藤は調子が良く、日本代表候補に追加収集された。

この時点ですでに重要なミスがあり、この時の代表メンバーにレフトを本職とする外野手が選ばれていないのである。

現役時代に名外野手であった守備走塁コーチの山本浩二が、この点を指摘すべきだった気がしないでもない。

ただG.G.佐藤も「ライトもレフトも同じようなものだ」と思い込んでおり、この点はもう少し事前にレフトの守備を練習しておくべきだったように思う。

リーグ戦から準決勝に進むのだが、その試合にG.G.佐藤は右肩に痛みを抱えた最悪のコンディションで臨んでいた。

その試合で、まず4回にトンネルをしてしまう。内野手のトンネルなら後ろの外野手がカバーしてくれるのだが、レフトのG.G.佐藤の後ろに野手はいない…

さらに9回の左中間への打球をグラブに当てるも弾いてしまい試合を落としてしまう。

森野将彦と阿部慎之助が試合後食事に誘って励ますが、G.G.佐藤の気持ちはここにあらず状態であった。



そして次の日の3位決定戦に。星野監督はG.G.佐藤をまさかのスタメン起用!

星野監督の采配を知っているファンなら、借りを返すチャンスを与えるのが星野采配なのだが、完全に気落ちしているG.G.佐藤にとってそれはさらなるプレッシャーとなってしまう…

3位決定戦でもエラーをしてしまい、銅メダルすら取れないという結果に終わってしまう。

一時は死にたいとまで思ったG.G.佐藤は、星野監督に謝罪の手紙を書くのだが、日本代表のキャプテンを務めた宮本慎也を通して「あのことは気にしなくていいから、自分の野球人生を全うして、野球界に貢献しろ」と星野監督からの伝言を受け、G.G.佐藤はその後必死にプレーし野球界に貢献することに。

2020.10.04 Sunday

長期政権のあと 佐藤優 山口二郎

安倍内閣は9月16日午前の臨時閣議で総辞職し、長かった安倍政権についに終止符が打たれた。

それを予想していたのか、佐藤優氏と山口二郎氏という意外に思える組み合わせの2人が、安倍政権後のさまざまな問題をテーマにしたのがこの本である。

対談形式ではなく、それぞれが1つのテーマに関して小エッセイのような感じで執筆しており、それが交互に続いていくような形式をとっている。

第一章では「安倍政権の正体」というテーマで、安倍政権の権力構造や、他の長期政権との比較をしており興味深い。

また面白い発想として「天皇機関説」ならぬ「首相機関説」といった考えを佐藤優氏はお持ちらしい。

第二章では「長期政権が変えた世界」として、民主主義から見た安倍政権や、新自由主義について解説している。

第三章では「なぜ、自民党は強いのか」で、中曽根政権が「生活保守主義」として生活水準を維持するような政策を勧めたため、支持層をリベラルな市民層にまで広げることに成功。

山口二郎氏に言わせると、自民党の賞味期限が伸びたとのことである。

第四章、第五章では、「安倍政権後に訪れる国難」「もはや先進国ではない」として、今後の日本が抱える厳しい現実を解説しており、ちょっと暗い気分になってしまうが、国難を乗り切るために色々と考えなくてはならない。

とてもタイムリーなテーマで、ぜひ読んでみてほしい本である。



この2人でも“踏みつけられたパンケーキみたいな顔をした人”が総理になることは、さすがに予期できなかったようである(笑)

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