2021.06.19 Saturday

危機の日本史 近代日本150年を読み解く 佐藤優 富岡幸一郎

さまざまな文学作品とそこから派生する思想から、危機の時代をどう生きるかを考える本。

と書いては見たものの、神学的視点から文学作品を吟味し、その時代背景などを考える本である。

「クロノス」…一方的に流れている時間
「カイロス」…決定的な出来事、歴史上の区切りとなる時間

この本では、この2つの視点で時間の経過を見ていくのだが、この視点は面白い。

昭和から平成への御代替わりの際には、左翼系の知識人は天皇制存続そのものを問題にし、天皇の戦争責任について言及し、保守派の論客も象徴天皇制を批判するような議論が起きたが、平成から令和への移行の際には全く起きなかったのは何故か?

こういう問題について本格的に考えるので、読み応えはあるが正直難しい。

天皇論、国体論にもかなり踏み込んでいて興味深い。





知の巨人とも言われる佐藤優氏と対応に渡り合える富岡幸一郎氏は、やはりただ者ではない。

ちなみに、この2人が過去に出した〈危機〉の正体も難解だった…

2021.06.09 Wednesday

現役引退 プロ野球名選手「最後の1年」 中溝康隆

王貞治、落合博満、長嶋一茂、古田敦也、水野雄仁、原辰徳、石毛宏典、中畑清、掛布雅之、江川卓、田淵幸一、清原和博、桑田真澄、村田兆治、駒田徳広、定岡正二、西本聖、山本浩二、渡辺久信、ランディ・バース、ウォーレン・クロマティ、秋山幸二、門田博光、長嶋茂雄。

これら24人の錚々たるレジェンド(一部例外もあり?)の引退する最後の年の姿と、引退に対する考え方などを紹介している。

それに加えて、各々のプレイヤーのあまり知られていない意外なエピソードの紹介が面白い。

落合博満のところでは、香取慎吾や安室奈美恵が表紙の「小学五年生」96年5月号で唐突に「落合博満VSラモス瑠偉」のスペシャル対談を紹介。

スポーツ誌でもなかなか企画しないような濃過ぎる対談で、これで小学五年生に何を教えたいのかよく分からないのだが(笑)、オレ流全開で容赦ない落合さんが素敵すぎる。



どのチームのファンの方も、野球好きなら楽しめる本だと思う。

2021.06.08 Tuesday

鳴かずのカッコウ 手嶋龍一

手嶋龍一氏と言えば、NHKのワシントン支局長だったこともあり、外交ジャーナリストというイメージが強い。

佐藤優氏との共著を何冊か読んだことがあり、特に「公安調査庁」について書かれた本は、知られざる官庁である公安調査庁について知ることができた。

そんな手嶋氏が公安調査庁を舞台に描いた小説がこの本である。

プロローグは、ウクライナ、根室、ロンドンのまったく関連性があると思えない3つのストーリーが描かれており、最初はその繋がりが分からないため「買う本間違えたかな(手嶋さんすみません…)」と思ったのだが、話を読み進めていくうちにその繋がりが分かって面白い。

公務員が安定しているからという理由で、公安調査庁に入った冴えない青年が、裏の世界で蠢くインテリジェンス情報をものにする。

インテリジェンスがテーマの映画や小説は、主人公はカッコいいのがセオリーのはずが、なんとなく入った青年が世界が驚く情報を入手する。

神戸の小さな公安調査事務所が、日本と北朝鮮、日本と中国といった1on1の関係だけでなく、複数のステークホルダーとなる国々が関係しており、このあたりの描写は報道機関の最前線で本当の外交を見ていた手嶋さんならではといったところか。

また関西在住の方や、関西に縁のある方にとっては、神戸を中心とした街の描写が丁寧で、すぐに街並みが浮かんでくるであろう。



読んでいくうちに主人公に肩入れしてしまい、最後の結果に関してはちょっと残念なところもあったが、いい意味でお役所とは思えないいいチームワークが、自分もそのメンバーになったかのごとく話に引き込まれてしまう。

手嶋氏の人を引き込む文章に圧倒されてしまった。

政治や外交に関心のある方には、絶対にお薦めしたい本である。

2021.06.07 Monday

捕手的視点で勝つ 里崎智也

里崎氏が少し真面目に捕手的視点で野球理論を語る本。

「リードに定義はない。結果がすべて」というのが里崎氏の信念ではあるのだが、サインには意図、つまり過程が重要とのこと。

こういう事を聞くと、ややノムさんと似ているなと思うところもあって興味深い。

「攻めの配球」や「インコースの使い方」に関しては、特にノムさんに相通じるところがある。

里崎氏による名捕手の条件は

「打てること」or「強いチームにいること」

他では聞かない斬新な視点で面白い。

そうすると弱いチームにいて打てないと名捕手にはなれないのである。

もちろん上記の条件以前に、キャッチャーとして基本の「捕る」「止める」「投げる」ができるのは言うまでもない。



捕手としての役割だけでなく、最新のベンチワークに関しての内容が、自分の知らないことが多く興味深かった。

埼玉西武ライオンズ・森友哉選手との対談も収録されており、野球好きには読み応えありの本だと思う。

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