2021.10.26 Tuesday

新世界秩序と日本の未来 米中の狭間でどう生きるか 内田樹 姜尚中

内田樹氏の突拍子もない思い付きに、姜尚中氏が理論的な解説と肉付けを行う感じの対談形式。

とは言え、内田氏の斬新な指摘は興味深く面白い。

日本の国内状況の指摘で、安倍政権で重用されていた人たちは、日本の国力が急激に下がったことをデータとしては知っていたはずだが、自分が国内で相対的に高い階層に属しているので、国が貧しくなり国力が衰微することは気にならないという点を指摘している。

また安倍政権時のネポティズム(縁故主義)、能力ではなく政権への忠誠心で人々を格付けした点を、組織の管理コストは劇的に下がるとのことだが、私のいる会社(デジタル大臣などを接待して週刊文春にスクープされたところ)も半分国のような組織なので納得させられた。

他国の分析に関しては、中国に関する見立てが面白い。

習近平政権は盤石ではなく、その理由の1つが治安維持予算が急増しているとのこと。

これは当然国内で内乱などのリスクが高まっていることを意味し、日本国内からは国内情勢を見ることはできないが、一枚岩ではないのであろうことが推測できる。

もう1つの中国の問題は、意外だったのだが人口問題で、2027年を境に人口がピークアウトすると同時に、今の日本以上の少子高齢化が進むとのこと。

だからこそ余力がある今のうちに、香港だけではなく台湾も自分のものにしようと躍起になっているそうである。

そういう背景が分かると、対中国の交渉は引き延ばせば状況は改善するように見えるのだが、日本は中国以上に力を失ってしまいそうなので、この手法は厳しいか…



私はAIに携わる業務を行っているのだが、その私からするとAIに関する見立ても面白い。

2021.10.25 Monday

自民党 失敗の本質

石破茂、村上誠一郎、内田樹、御厨貴、前川喜平、古賀茂明、望月衣塑子、小沢一郎といった錚々たる面々が、現在の自民党の問題点を分かりやすく指摘している。

インタビューしたものを文字起こししている本なので、読みやすい本なのだが、読書好きにはやや物足りないか?

とは言え、2021年8月の取材に基づいた本なので、タイムリーな内容が多いので、雑誌だと思って読めば楽しめる。



個人的には東京大学の御厨貴先生のご指摘が鋭く、自民党議員である石破茂氏と村上誠一郎氏の自らの政党の分析が興味深かった。

2021.10.10 Sunday

「仕事ができる」とはどういうことか? 楠木建 山口周

一橋大学ビジネススクール教授の楠木氏と、経営コンサルタントである山口氏が対談形式で「仕事ができる」というテーマについて語り合う本。

少し前に出た本を新書化したものなのだが、「スキル」「センス」という2つのキーワードを使って「仕事ができる」を定義するのだが、なかなか面白い。

「スキル」とは国語、算数、理科、社会や、英語が話せる、弁護士資格を持っているとか、できるorできないの話で説明することが可能なもの。

「センス」とは「女性にモテる」などのように説明することが難しく、同じことをしてもモテる人はモテるし、モテない人はまったくモテない(笑)

これを「役に立つ」がスキルで、「意味がある」がセンスと分類しており、なるほどなと納得させられる。



堅苦しい本かと思いきや、ざっくばらんに雑談っぽい対談なので、気軽に手に取ってほしい。

仕事に悩む若手社員などには良いヒントになるのではないか。

楠木氏が柳井正氏をやたら持ち上げるなと思っていたら、ファーストリテイリングの経営人材育成に携わっているんですね(笑)

著書で持ち上げるのも「仕事ができる」という事なのだろうか?

2021.10.09 Saturday

ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」 平井一夫

ソニーのニュースと言えば、数年前までは赤字の大きさばかりが話題になり、建物や事業部を売却したというニュースばかりを聞いていた気がする。

そのようなソニーを蘇らせ、KANDOを生み出したのが平井氏である。

この平井氏の経歴が異色で、ソニーグループの音楽会社に入社し、久保田利伸さんのアメリカ進出を手掛けたり、プレステの販売を担当したりと、ソニー本流のエレクトロニクス部門に携わらないまま社長の地位まで登りつめた方なのである。

私の勤めている会社も日系大手だが、うちの会社の場合は新卒で本体(当社では持株と呼ばれる)に入社し、入社と同時に幹部候補生と認められ、そのまま失策がないまま登りつめないと社長にはなれない。

生え抜きじゃないと社長はおろか、役員のポジションすらほぼ不可能な会社なので、ソニーの開かれた社風というか実力主義の会社に思える内容に羨ましいとも思える。

平井氏の文章を目にしていると、偉ぶらないオープンマインドな姿勢が、部下からの気軽さ相談や提案を可能にし、それがソニー再生を成し遂げたということがよく分かる。

また平井氏自身も、意見が出やすい環境づくりに尽力されていたようで、そのあたりの手法は部長や課長クラスでも、マネジメントの手法としては良い参考になる。

中間管理職以上で仕事をされている方には、参考になる点が多い本だと思う。



また外部からコンサルタント出身でMBAを持っているプロ経営者を招聘して企業を立て直そうとする企業も多いが、ソニーのような企業だと社内に有能な人材も多いと思うので、会社に愛着を持っている人間をトップに据えるほうが上手くいくのだろうなとも思えた。

2021.10.08 Friday

デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える 堤未果

2021年9月1日よりデジタル庁が発足するなど、デジタル化を加速させようとしている日本政府。

ただちょっと待って欲しい。このデジタル化は本当に日本の為になるのだろうか?

そのあたりを堤未果さんが分かりやすく解説してくれている。

本のプロローグで引用されているSF作家のアーサー・C・クラーク氏の

「技術はある地点から、専門家以外には魔法と区別がつかなくなる」

この言葉が私にはとてもインパクトがあり脳裏に焼き付いている。

私は、日系大手IT企業で営業やマーケティングを行っているのだが、正直最新のIT技術を完全に把握できているわけではない。

私に限らず、営業系やバックオフィス系だとIT企業勤務であってもすべてを把握できているわけではなく、いや技術者の場合でも自分の担当以外のソリューションは理解できていない場合も多々あるように思う。

一般の方々はもちろん、お歳を召された政治家の皆さんが正確に把握できているとは思えない。

そのような状況で急激にデジタル化を進めて、我々の生活に問題はないのであろうか?

例えばビジネスパーソンだけでなく、学生の方などもオンライン会議ツールZoomを利用したことがあるかと思う。

この会議の暗号キーが中国北京にあるサーバーを経由しているらしいのだ。

そうなると、政府や企業の重要なオンライン会議の内容が筒抜けになる危険性が高いので、アメリカやドイツ、台湾などではZoomの利用は控えるようにと指示がでているらしい。

またTikTokも同様のリスクがあるのだが、日本ではどちらも積極的に利用されている。



これに加えて、今の社会では重要な情報をクラウド化することは普通のことだとは思うが、外交や安全保障、そしてマイナンバーカードのような個人情報(資産情報や健康情報も紐づけられている?)が外資系企業のものだった場合に、何かあった際に国家として責任が取れるのだろうか?

普段やや右寄りの意見を主張されている政治家の方々が、これを許している理由が私には理解できない。

IT業界にいる方はもちろん、それ以外の方にも、日本の将来のために読んでほしい本である。

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