2023.01.14 Saturday

ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか? 堤未果

「デジタル・ファシズム」 など社会の背景を分かりやすく解説してくれている堤未果さんの最新作。

2022年環境破壊で深刻な食糧不足に陥り、人々は研究室で人工的に作られた高タンパク食品「ソイレント・グリーン」の配給で生き延びている。

このような衝撃的な内容からこの本は始まるのだが、これは1973年に公開されたアメリカ映画「ソイレント・グリーン」での1シーンである。

何だ映画の話か、と安心したいところなのだが、現在世界はこの映画のような方向に進んでいるように思えてならない。

第1章では「人口肉バーガー」について取り上げられているのが、これは環境にやさしく気が問題も解決できベジタリアンも食べることができる夢の食べ物のように思える。

ところが、この夢の食べ物の安全面に関して、生産企業側は御用学者に安全である旨を主張させているが、やはり不安が残る。

第三者機関など利害関係のない中立組織によるチェックが必要だろう。

第2章では「フードテック」がテーマで、遺伝子組み換え食品やゲノム編集食品を取り上げている。

この両者に関して、私はどちらも怖いと思うのだが、「遺伝子組み換え食品=悪い」「ゲノム編集食品=良い」と思われているようで、ゲノム編集された魚をふるさと納税で返礼品に当てた自治体があるそうである。

ただこの流れは日本だけではなく、世界中でゲノム編集への規制緩和が進んでいるらしく、唖然としてしまう。

第3章では、農民も参加していた「国連食料サミット」が大手グローバル企業や大規模投資家に乗っ取られ、彼らが国連幹部や各国政府と連携して物事を決めてしまうらしい。

国連と聞くと、弱者の味方というイメージもあるかもしれないが、所詮は戦争の勝者連合にすぎないので強いものの見方をするのだろう。

それに加え、某有名なIT企業のトップの方が農地を大量に買い漁っており、農地を使って更なる金儲けを考えているようである。

第4章では、牛が地球環境に悪影響を与えている、ゲップとともに温室効果ガスを出し、生産に穀物と水を大量に消費すると言われているようなのだが、はたして本当にそれは正しいのだろうか?

この考え方の問題点を堤さんが取材やインタビューを交えて分かりやすく解説してくれている。

個人的には、プライベートジェットで好き勝手に動き回るアホが最も地球に悪影響を与えていると思う。

第5章では、農業のデジタル化についてで、もちろんデジタル化することで管理しやすい点はあるだろう。

ただグローバルIT企業が作ったアプリで管理すると、情報はその企業に筒抜けになり集められたビッグデータはどのように活用されるか大きな懸念が生まれる。



こう聞くと将来に不安しかないように思うのだが、日本も世界もまだまだ捨てたものではないということで、このような流れに逆行して頑張っている素敵な方々の紹介があり、その点は少しだけ希望が持てた。

2021.10.08 Friday

デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える 堤未果

2021年9月1日よりデジタル庁が発足するなど、デジタル化を加速させようとしている日本政府。

ただちょっと待って欲しい。このデジタル化は本当に日本の為になるのだろうか?

そのあたりを堤未果さんが分かりやすく解説してくれている。

本のプロローグで引用されているSF作家のアーサー・C・クラーク氏の

「技術はある地点から、専門家以外には魔法と区別がつかなくなる」

この言葉が私にはとてもインパクトがあり脳裏に焼き付いている。

私は、日系大手IT企業で営業やマーケティングを行っているのだが、正直最新のIT技術を完全に把握できているわけではない。

私に限らず、営業系やバックオフィス系だとIT企業勤務であってもすべてを把握できているわけではなく、いや技術者の場合でも自分の担当以外のソリューションは理解できていない場合も多々あるように思う。

一般の方々はもちろん、お歳を召された政治家の皆さんが正確に把握できているとは思えない。

そのような状況で急激にデジタル化を進めて、我々の生活に問題はないのであろうか?

例えばビジネスパーソンだけでなく、学生の方などもオンライン会議ツールZoomを利用したことがあるかと思う。

この会議の暗号キーが中国北京にあるサーバーを経由しているらしいのだ。

そうなると、政府や企業の重要なオンライン会議の内容が筒抜けになる危険性が高いので、アメリカやドイツ、台湾などではZoomの利用は控えるようにと指示がでているらしい。

またTikTokも同様のリスクがあるのだが、日本ではどちらも積極的に利用されている。



これに加えて、今の社会では重要な情報をクラウド化することは普通のことだとは思うが、外交や安全保障、そしてマイナンバーカードのような個人情報(資産情報や健康情報も紐づけられている?)が外資系企業のものだった場合に、何かあった際に国家として責任が取れるのだろうか?

普段やや右寄りの意見を主張されている政治家の方々が、これを許している理由が私には理解できない。

IT業界にいる方はもちろん、それ以外の方にも、日本の将来のために読んでほしい本である。

2018.10.14 Sunday

日本が売られる 堤未果

堤さんの本は、いつも他のメディアがなかなか取り上げない日本の問題、世界の問題を取り上げてくれて興味深い。

今回は「日本人の資産が売られる」「日本人の未来が売られる」という括りで、さまざまな問題点を指摘してくれている。

私は「水道民営化」の問題を、より詳しく知りたくて購入したのだが、第1章の最初で取り上げてくれていた。

世界各国で水道民営化に失敗した事例、その後再び公営化する際に多額の費用負担する羽目になった例が数多くあるのに、この国はいったい何をやりたいのかと憤りを感じてしまう。



また私は農業問題に関する知識をあまり持ち合わせていないのだが、「種子法廃止」「農薬規制緩和」「遺伝子組み換え食品表示消滅」といったテーマの問題点を知ると、今後の日本で適切な価格で安全な食料を調達できるのだろうかと、恐ろしくなってしまった。

今回の本は、我々に身近なテーマを分かりやすく解説してくれているので、多くの方々に読んで頂き、問題意識を持ってほしい!

2017.11.29 Wednesday

核大国ニッポン 堤未果

堤未果さんの本は、何冊か読ませて頂いており経済がテーマの本が多いので、核というテーマに少し驚き。

そして「核大国ニッポン」というテーマに、さらに驚き!

とは言え、この方の本は価格以上の価値がある本ばかりで、興味深い。

オバマ大統領(当時)の「核なき世界」演説を聞き、世界は平和への一歩を踏み出したかと思えたが…

軍事予算、核関連予算は増えている現状。

何の規制もないまま使用されている劣化ウラン弾と、その後遺症に悩む元軍人。

メディアがあまり取り上げない隠された真実がよく分かる本。



考えされられるテーマが多いのだが、明るい話題も紹介されている。

日本のNPOが菜の花を使ってチェルノブイリの放射性物質を取り除くプロジェクトを実施しており、現地の人たちにも喜ばれているとのこと。

武器支援などではなく、こういう支援こそが日本に求められている役割なのではないだろうか?

2015.09.14 Monday

日本の大問題 「10年後」を考える 一色清 姜尚中

この本はちょっとズルい。

と言うのも、佐藤優氏、上昌広氏、堤未果氏、宮台真司氏、大澤真幸氏、上野千鶴子氏という「本を出せば売れる人」を集めての講義だからである。

私がよく読む佐藤氏、堤氏といった方の部分はもちろんだが、個人的には上氏、宮台氏の部分が新鮮だった。

宮台氏の文は、私にはやや難しかったのだが、特に読み応えあり!





ちなみにモデレーターである一色清氏と姜尚中氏の対談で「グローバル化」の問題点を語っているのだが、ここは興味深かったので、もう少し掘り下げてほしかったと思う。

2015.07.01 Wednesday

沈みゆく大国アメリカ(逃げ切れ!日本の医療) 堤未果

堤未果さんがアメリカの問題点を解説しているシリーズの最新刊。

前回の本に続き、アメリカの医療制度の問題点を鋭く指摘している。

馬鹿なアメリカ国民を上手く騙して(ブレーンだった教授曰く)、オバマケアが成立。
そして成立後に、様々な問題点が明るみになるが、時すでに遅し…

日本のように、政府に薬価交渉権がないので、製薬会社はぼったくり状態…

このようにアメリカの医療は、強欲すぎる企業に毒されている。





そして今、日本の国民皆保険制度が、アメリカの外圧によって危機に晒されていると指摘している。

私たち日本人が当たり前のように保険証を使い、3割負担(基本)で医療機関で診察してもらえている。
そこにアメリカの民間保険会社が参入しようと、様々な手を使い、虎視眈々と狙っている。

そうなれば、日本でもちょっと病院にかかるだけで、数百万かかってしまうような状況が生まれるかもしれない。

日本人は、国民皆保険の素晴らしさをもっと理解し、これを絶対に守らなくてはならない。

2014.12.28 Sunday

沈みゆく大国アメリカ 堤未果

日本に住んでいると、保険証さえ出せば安価で診察を受けることができる。

これは国民皆保険体制が確立されているからで、日本の国民は何らかの保険に加入しているということが前提になっているからである。

ところがアメリカには、このような制度はなかった。
それをオバマ大統領が「オバマケア」と呼ばれる医療保険制度を導入。

これだけ聞くと、アメリカの保険制度が良い方向に進んだように思うのだが現実は…





まさかの中流階級の自己破産といった信じられない状況になっている…

ではオバマケアの問題点は、どこにあるのか?
裏の目的があるのではないか?

重いテーマだが、読みごたえのある本であった。

堤さんの本は、結構読ませて頂いているのだが、関係者からはきっちり自分でインタビューをとっており、取材力が素晴らしい。

2013.09.02 Monday

(株)貧困大国アメリカ 堤未果

岩波新書から出版されている「アメリカの貧困」 をテーマにしたシリーズの完結編。
異様な怖さを感じてしまう本で、考えさせられる一冊。

第1〜3章では、企業による農業の破壊、企業による食の破壊、そしてその破壊がアメリカの外にも飛び出していることを指摘している。
具体的事例を色々と紹介してくれているのだが、企業の横暴には怒りを抱かずにはいられない。
もう少し詳しく書きたい気もするが、ネタバレになるので…

ただ一言だけ言わせて頂くと、食や農業は、ある意味最強の兵器になるので、日本のようにその兵器を持ち合わせていない国は、アメリカに取り込まれないようにしないといけないと思えた。



第4章では露骨な公共サービスの民営化が招く大きな弊害、第5章では州議会が大企業に牛耳られている点を指摘している。

アメリカという国の怖さを実感することになった…

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