2023.05.23 Tuesday

夜明け前(が一番暗い) 内田樹

内田樹氏のAERAでの連載、2018年7月30日から2022年11月21日のものを分野別に分けて書籍化したもので、元々は雑誌のため読みやすい。

新型コロナウイルスへの対処、東京オリンピックを開催すべきか否か、旧統一教会問題、安倍氏国葬の是非といったテーマについて内田氏がその時々の見解を述べる。

どうしても今から見ると古い情報もあるのだが、その見立てが正しかったのか、はたまた見当違いだったのかをチェックできるのでその点は面白い。





この本を読みながら改めて感じたことは、日本がどうしても劣化しているように思えてならない。

「また日本が貧乏になった(2021年3月8日号)」というテーマで、森喜朗の女性蔑視発言について触れているのだが、その際に出てきた言葉で「わきまえておられる」という発言がある。

これは「身の程を知れ」ということなのだろうが、高度成長期の日本では「身の程をわきまえず」野心と欲望に衝き動かされた時期だったそうで、そのおかげで日本は復興できたのである。

その高度成長期には当然「わきまえろ」なんて言葉は聞かなかったそうで、そう聞くとやはり今の日本には明るい未来がみえづらい…

2023.05.13 Saturday

政治はケンカだ! 明石市長の12年 泉房穂

暮らしやすい街づくりだけでなく、暴言問題なども含めて、良い意味でも悪い意味でも有名な元明石市長である泉房穂氏の考え方を知りたくて購入。

市長時代の日々のエピソードに加えて「議会論」「政党論」「役所論」「宗教・業界団体論」「マスコミ論」「リーダーシップ論」といった独自の斬新な考え方を聞けるのが面白い。

明石市の漁師の家庭に生まれ、東大に進学し、NHKに入社後テレビ朝日に移り、政治家秘書、弁護士を経て政治家に。

こう聞くと順風満帆なエリートの経歴にしか見えないのだが、幼少時代は貧困で苦労したそうで、世の中の不条理に抗いたくて10歳の時に「将来明石市長になる」と決心したそうである。

今の時代なら、貧困な家庭に生まれたにもかかわらず東大に進学し、政治家になるということはほぼ不可能なので、泉氏はこの時代に生まれたこので活躍できたのだと思えてしまう。

市長として市議会とのやり取りが大変だったそうで、vs自民党、vs公明党には苦労したそうなのだが、日本維新の会と日本共産党は賛成してくれることが多かったそうである(笑)

水と油の関係である維新と共産党に協力してもらった数少ない首長とのこと。

日本維新の会と言えば、橋下徹氏とは司法修習の同期らしく、考え方は違えど頻繁に交流しているそうで、パワハラ報道が出た際にも連絡を取り合う中らしい。

また立憲民主党に関しては、自民党に対して以上に手厳しかった(笑)

自分が進めたい政策を進めるにあたって、議会が障壁になったのはもちろんだが、それ以外にも副市長をはじめとする職員も大きな障壁になったそうで、自分の進めたい政策を進めるにあたって色々とやり合ったそうである。

この泉氏は社会人経験や行動力があり、なおかつケンカも辞さない覚悟がある方なので、議会や職員とやり合いながらも政策を進めることができたが、普通の首長ではなかなか難しいのではないか?

関西の某市で新しく若い市長さんが誕生したが、東大→ハーバードといった経歴は素晴らしいが、社会人経験はなくなおかつケンカなどしたこともなさそうなので、議会や職員に取り込まれてしまいそうでならない。



個人的には、泉氏の話を聞きたいのにインタビュアーの鮫島浩氏が前に出過ぎてしまい、飯島氏の考えに泉氏が頷くだけになってしまうところも見られ、その点がもったいなかった(特にマスコミ論)

2023.05.03 Wednesday

世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道 中野剛志

私は政治がテーマの本を読むことが多く、経済がテーマの本を手に取ることはあまりないのだが、急速に進んでいる世界インフレを扱っており、気になるテーマだったので購入してみた。

中野剛志に関してはTPP亡国論で有名な方で、その印象が残っており読みやすいだろうと期待して購入したところ、想像以上に分かりやすく買って正解だった。

書き出しはグローバリゼーションについてから始まるのだが、グローバリゼーションの進展度合いは貿易開放度(GDPに占める輸出入の合計の比率)から判断できるとのこと。

ただこの数値が2008年がピークであり、その後は伸びていないとのことなのだが、という事は新型コロナウイルスやロシアのウクライナの侵攻以前にグローバリゼーションはすでに終わっていたのである。

ちなみに、この2008年というのはリーマンショックの時である。

そしてこのグローバリゼーションの終焉がこのインフレを引き起こしているのだが、そのインフレには

「コストプッシュ・インフレ」供給減少で物価が上昇
「デマンドプル・インフレ」重要過剰で物価が上昇

という2つのインフレがあるそうである。



現在の世界を覆っているインフレはもちろん「コストプッシュ・インフレ」なのだが、こういう状況では積極財政が必要不可欠である。

ところが、どこかのアホな国では増税を検討しているのだから、政治家のレベルの低さを嘆かずにはいられない…

またインフレの話とは少しズレてしまうのだが、リベラリズムに関する説明が分かりやすく自分が他の人に説明しなくてはならない場面で活用させて頂こうと思った。

2023.05.02 Tuesday

国難のインテリジェンス 佐藤優

佐藤優氏がホストとなって、各界の有識者とそれぞれのテーマで対談し、問題の解決策を考える。

◆新井紀子 DXで仕事がなくなる時代をいかに生き抜くか
◆藤井 聡 巨大地震とデフレが日本を滅ぼす前に
◆三浦 展 男性は結婚できると中流意識が持てる
◆中谷 巌 資本主義にいかに倫理を導入するか
◆河合雅司 人口減少が進む日本で「戦略的に縮む」方法
◆柳沢幸雄 毎年1000人海外へ「現代の遣唐使」を作れ 
◆岩村 充 変容する資本主義と経済成長時代の終焉
◆菊澤研宗 人間は「合理的」に行動して失敗する
◆君塚直隆 現代の君主制には国民の支持が不可欠である
◆八田進二 「禊」のツールとなった「第三者委員会」再考
◆戸松義晴 仏教は「家の宗教」から「個の宗教」へ向かう
◆清水 洋 「野生化」するイノベーションにどう向き合えばいいか
◆國頭英夫 財政破綻を目前に、医療をいかに持続可能にするか
◆五木寛之 「老大国」日本が目指すは「成長」でなく「成熟」

上記のような錚々たるメンバーとの対談で興味深いテーマも多いのだが、14名との対談を新書に詰め込んだためか深い議論とは言い難かった。

ただ開成中学校・高等学校校長を務めた柳沢氏の「現代の遣唐使」という考え方で、優秀な学生を4年間海外で学ばせるための費用を国が出すという考え方は興味深かった。



企業で働く者としては、会計のプロである八田氏の「第三者委員会」に対する考え方で、企業や組織で不祥事が発生した際に「第三者委員会」を設置して原因究明にあたり問題解決に努めるという話をよく聞くが、実際は「第三者委員会」は対して機能していないことを分かりやすく解説してくれていた。

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