2023.03.28 Tuesday

国商 最後のフィクサー葛西敬之 森功

国鉄の分割民営化に尽力し、民営化後はJR東海の社長や会長としてグループを引っ張った葛西氏。

国鉄時代は、この本の中でも出てくる井手正敬氏、松田昌士氏と共に「国鉄改革3人組」と呼ばれ、ある時は協力し、またある時は競争しながら組織内で存在感を増していった。

のぞみの導入をはじめとした新幹線の整備、最初はあまり乗り気でなかったがリニアモーターカーへの思いなど1人の鉄道員として日本の鉄道整備に尽力してきた生涯がよく分かる。

またそれに加えて、国鉄民営化の際には労働組合と協力関係を取り付け、その後の連絡調整役を担ったりもしていたのだが、晩年は保守の考えを前面に押し出し、保守系の政治家の支援などを行っていく。

特に安倍政権の後ろ盾になっていた事は有名で、重要な役職の任命にも深く関与していただけでなく、ご自身も国家公安委員など政府の重要な役職を担っていく。

そのあたりの背景を、森功氏の徹底した取材をもとに詳細に書かれている。



この方への評価は難しいと思うが、国鉄民営化の背景を知りたい方、安倍政権時代の官邸がどのようにして官僚をコントロールしていったかを知りたい方にはぜひ読んでほしい本である。

個人的には国鉄のエリート(JR以前に入社した方)は「自分達が日本のインフラを支えているんだ」という誇りをお持ちのようで、霞が関の省庁の役人相手にも堂々と交渉していたという話が、私の祖父も国鉄職員だったため強く印象に残った。

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