2021.06.08 Tuesday

鳴かずのカッコウ 手嶋龍一

手嶋龍一氏と言えば、NHKのワシントン支局長だったこともあり、外交ジャーナリストというイメージが強い。

佐藤優氏との共著を何冊か読んだことがあり、特に「公安調査庁」について書かれた本は、知られざる官庁である公安調査庁について知ることができた。

そんな手嶋氏が公安調査庁を舞台に描いた小説がこの本である。

プロローグは、ウクライナ、根室、ロンドンのまったく関連性があると思えない3つのストーリーが描かれており、最初はその繋がりが分からないため「買う本間違えたかな(手嶋さんすみません…)」と思ったのだが、話を読み進めていくうちにその繋がりが分かって面白い。

公務員が安定しているからという理由で、公安調査庁に入った冴えない青年が、裏の世界で蠢くインテリジェンス情報をものにする。

インテリジェンスがテーマの映画や小説は、主人公はカッコいいのがセオリーのはずが、なんとなく入った青年が世界が驚く情報を入手する。

神戸の小さな公安調査事務所が、日本と北朝鮮、日本と中国といった1on1の関係だけでなく、複数のステークホルダーとなる国々が関係しており、このあたりの描写は報道機関の最前線で本当の外交を見ていた手嶋さんならではといったところか。

また関西在住の方や、関西に縁のある方にとっては、神戸を中心とした街の描写が丁寧で、すぐに街並みが浮かんでくるであろう。



読んでいくうちに主人公に肩入れしてしまい、最後の結果に関してはちょっと残念なところもあったが、いい意味でお役所とは思えないいいチームワークが、自分もそのメンバーになったかのごとく話に引き込まれてしまう。

手嶋氏の人を引き込む文章に圧倒されてしまった。

政治や外交に関心のある方には、絶対にお薦めしたい本である。

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